公務員になりたい、という話のナンセンス

よく、大学生が将来の進路(希望する職業)として、「公務員になりたい」という話をします。それ自体はまったくありふれた話で、違和感を感じる人は少ないと思うのですが、私自身は、

将来の職業として「公務員になりたい」という発言(考え)自体が、それ自体ピントのズレたものである

という認識を、本当はみんな持つべきだと思っています。そのこころはというと…

そもそも公務員とは、たとえば、

国や地方自治体(都道府県や市町村)に雇われ、公共(社会・国民)のために様々な仕事に従事し、税金から給料をもらう人(山本直治『公務員入門』(ダイヤモンド社))

という定義がされています。10年以上前に出されたこの本では、上記の定義に続けて、こんなことが書かれています。

 でも、その職種や仕事の内容を考えてみてください。霞が関の中央官庁、県庁、市役所、教師、警察官、消防士…と限りなく広いのです。まさに「公務員」とは、別の職業の呼び名で比較すれば「プロスポーツ選手」とか「芸人」、いやそれ以上の広がりを持つ仕事の肩書きではないかと私は考えています。

 プロスポーツ選手といえば、パフォーマンス(あるいは賭け事)としてのスポーツ競技に出場することで観客やスポンサーに歓喜と興奮を提供し、報酬(賞金・出場料など)をもらう仕事です。日本でプロとして食べていける競技種目は、野球・サッカー・ゴルフ・競馬・競輪・競艇・格闘技(相撲を含む)などでしょうが、それぞれの競技でやるプレー内容はもちろん、プロへのなり方、生活スタイルや年収水準も異なっています。

 あるいは芸人はどうでしょうか。こちらはスポーツ以外のさまざまなパフォーマンスで周囲を魅了し、観客やスポンサーに感激と興奮を与えてお金をもらう仕事ですね。あえて「芸能人」と申し上げないのは、俳優、ミュージシャン、モデル、お笑い芸人、タレント、司会者、アナウンサーに加え、落語などの伝統芸能家や大道芸人、声優などまでを含めたいからです。

 こうしたプロスポーツ選手や芸人の世界を見てください。プロ野球とJリーグ(サッカー)では選手の平均年俸や平均選手生命が違うといいますし、芸人の世界も、売れっ子タレントと、アルバイトしながらでなければ生活が維持できないインディーズの(メジャーデビューしていない)ミュージシャンなどさまざまです。

 こうして、大くくりの「種目」でみてもそうですし、仮に同じ種目でもプロ野球のように所属チームにより年俸水準が大きく違います。それこそ同じチームでもスーパースターから二軍選手までいて、待遇には雲泥の差がありますよね。

 プロスポーツ選手や芸人といえば、有名になれ、人々からちやほやされ、高年収になり、美人アナウンサーと結婚できるかも…というのがイメージですが、私たちが知っているのは日の当たっているごく一部の有能な人のみのことであって、全員に当てはまるわけではないということはちょっと考えればわかるはずです。

 つまり、公務員といっても単なる「プロスポーツ選手」や「芸人」と同じくらい多種多様な職業・職種群なわけです。

「おれ、プロスポーツ選手を目指すぞ」「何の競技だよ」

「私、芸能人になりたい」「歌うの、芝居するの、コントやるの?」

という会話を、公務員に当てはめてみたらどうでしょう。そして、分野ごとに適性があるのはスポーツも芸能も公務員も同じ。不向きなものを目指そうとすると、あるいは縁あってその道に入れたとしても、その先に待っているのは、、、。

事務職希望の人が、警察や消防を併願してそこしか受からなかったらどうなるか?

「公務員になりたい」がいかに乱暴な発言か、わかりましたかね。

この先は、noteで書いていこうと思います。(リンク先準備中)